サイパン島一周のダイビング

我々がサイパンに到着する前日までは、コンディションが良くなかったという事だ。9月1日の朝。例によって酒びたりの前日を引きずって、重い頭を抱えながら港に向かった我々は、12本のタンクを船に積み込んだ。カシラは、いつものように遠い目で今日のプランを練っている。シャチョーは、昨日の多すぎたワインを後悔しているようだ。3人でタンクが12本ということは、一人4本ということである。
いざ出航だ

  8時53分、フィッシングベース港を南回りで出発。天気はすこぶる良いが、風がある。コンディションは良くない。ポイントを決めるために、カシラは昨晩から何度も地図を開いては閉じてを繰り返していたがそれは船上でも続いていた。
イルカの群れに見送られながら、オブジャン、ラウラウを越えていく。
9時58分、一本目エントリー。禁断の島の南側、「禁断アウトサイド」だ。入ってすぐ、魚の群れを発見。中にひときわ大きいやつがいる。中型のナポレオンだ。寄っていくが逃げる気配がない。10メートル付近まで寄って、始めて動き出した。動かないデジカメを呪い、深場に去っていくナポレオンフィッシュの後姿を追うように足を進めた我々は、水深28メートルのディープダイビングを40分で切り上げた。

2本目は、バードアイランドを通り過ぎ、グロットの先へ。
12時6分、グロット北の大穴の先にエントリー。
入ってすぐに亀が迎えてくれた。流れに乗って北に進む。カシラが第2洞窟を探すために深度を深めた。結局、第2洞窟の入り口は見つからなかったが、ふと水深計を見ると36.1メートル。カシラと私は、苦笑いを交わしながら徐々に高度を上げた。暫く流されると、また亀がいた。こちらに気づいているのか、いないのか。そばを通り過ぎる亀を放っておくカシラではない。追いかけて写真を撮る。私も、もう一歩で触れるところまでいったが、亀には勝てなかった。それから間もなくすると、また亀がいた。小さ目の亀が2匹。遠目の亀に気を取られつつ、岩を超え、浅場の棚の向こうを覗くと、何かがたむろっている。10メートル先の群れは、大型で銀色に輝き、50匹以上もいただろうか。ギンガメアジと思われるその群れは、私の大きなリアクションに驚き、あっという間に去っていった。今日、2本目のドリフトダイビングだった。

13時55分。昼食をすませた我々は、タートルネックにエントリーし、ウィングまで流すことになった。比較的平坦な地形でのドリフトであったが、島の西側はうねっており、右往左往しながらウィングのクレパスに到着。途中でまた、亀と遭遇。今日は亀とよく会う。クレパスで、貝好きの私はカシラにお願いし、ウコンハネガイの写真を撮った。

相変わらず元気な姿に、思わず「よしよし」と声をかけながら、写真に収める。ウィングのブイのロープでつまらん写真を撮ったあと、救命ブイを上げるカシラの大股を撮影。

ガンガゼを根城にするヨウジウオ、オイランかヒフキか

15時53分。ロックケーキへ。これでサイパン島一周である。ブイに係留したものの、流れの速さにロープ潜行をあきらめる。今日は結局、4本ともドリフトだ。ロックケーキのブイから、はるか南でエントリー。流れは北に向かっている。この頃にやっと、二日酔いのシャチョーの元気が戻ってきた。3人一緒に潜行開始。速い流れでパーティーが崩れるのを防ぐためだ。エントリーは成功。下を見ると、水底が猛スピードで移動している。固まって降りられたことに感謝しながら周囲を見回していると、岩の隙間の亀と目が合った。私と亀との距離、わずか50センチ。目が合ったとは、まさにこのことである。カシラもシャチョーも先に行ってしまったが、今までろくな写真を撮っていない私としては、汚名挽回のチャンスだ。すかさずシャッターを切ったのはいいが、近すぎて顔しか写せない。

口の先端が尖っていて、全体に白っぽい。絶滅危惧種のタイマイである。

御用となったカシラ?
浮上を知らせるためのフロートを打ち上げるのだが、このヒモがやっかいなことになることもある。ダブルチェーンノットは上から編むべきだったと言っていた。

とりあえず亀の写真で満足をした私は、またくだらん写真を撮りながら皆と合流。合流する前に、ちょっとだけ流れに逆らって泳いでみたのだが、10㎝進むのにゼエゼエいってしまうほどで、少し後悔した。合流すると、すぐにカシラは東へ進路を取った。あのまま北へ流されると、チャンネル沿いに外洋まで行ってしまう危険があったということだ。

16時31分。エキジットした我々は、風もだいぶ涼しくなった船上で、一人一人、今日の思いを胸に綴じた。 September 1st, 2001.